東京家庭裁判所 平成2年(家)5507号 審判 1990年6月20日
申立人 福本美奈子
主文
申立人の氏「福本」を「福本ロビンソン」に変更することを許可する。
理由
1 申立人は、主文同旨の審判を求めた。
2 申立人に対する審問の結果及び本件記録によれば、次の事実が認められる。
(1) 申立人は、平成元年10月21日カナダ国籍ジェーク・ロビンソンと同国で婚姻し、同国で生活した後一緒に帰国した。申立人は、婚姻の際、カナダで氏を「福本ロビンソン」として登録し、運転免許証、学生証、健康保険カードなど同国における公的なものはすべて「福本ロビンソン」となっている。
(2) 申立人は、今後当分日本で生活するが、将来はカナダでの生活もしたいと考えているところ、日本での戸籍上の氏とカナダでの氏が異なるのでは日常生活上極めて不便であるとして「福本ロビンソン」と変更することを強く望んでいる。
3 上記事実によれば、申立人についてはその氏を「福本ロビンソン」と変更する必要性が高いといえるが、戸籍法は外国人と婚姻した者について、その配偶者の氏への変更は届出によりすることができるとしているものの(同法107条2項)、本件のように夫婦の双方の氏を併記した新たな氏への変更については何ら規定していないし、また、日本人間の婚姻の場合には、夫婦は夫又は妻の氏を称することとされ(民法750条)、夫婦の双方の氏を併記した氏を使用することは認められていない。
しかしながら、今日の国際交流が盛んになり、国際結婚も増加している社会情勢のもとにおいては、各国における氏の制度の相違も反映し、外国人と婚姻した日本人について、単に外国人配偶者の氏に変更するのでは足らず、本件のように妻の氏と夫の氏を併記した新たな氏を使用する必要性が高い場合が出てくることは当然考えられる。そして、このような事情は十分考慮に値し、一方、このような氏への変更が認められても我が国の氏の制度上特に支障があるとは思われない。
そうすると、本件氏の変更については、前記認定の事実に照らし、戸籍法107条1項にいう「やむを得ない事由」があると認め、許可するのが相当である。
よって本件申立てを認容することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 木村要)